File2 受講者の声

広がる視野、高まる経営者視点

医療法人 修幸会 草津こまくさ病院
群馬県吾妻郡の療養114床の病院。2009(平成21)年に設立され、内科・泌尿器科・整形外科の診療を行っている。普段から職員間のコミュニケーションが活発であり、介護福祉士の資格取得といった教育・研修も積極的に進めている。

左から順に、理事長兼院長の佐藤氏、介護課長の八田氏、事務長の丸山氏。

病院の外に出しても通用する人材に

――なぜお二人に参加してもらったのですか?

佐藤 行動するキッカケをつくってもらいたいと思っていました。私のように、医師は社会について教えられる経験が少ないと思いますので、一般企業の研修に参加してもらいました。礼儀作法などは他の研修で学習してもらったことがあったので、それとは異なり、同じ志をもった人と接することのできる機会になればと思いました。そういう意味でのキッカケづくりでした。参加することで、2人が勉強してくれたり、他の研修に出たいと思ってくれたら良いと思っていました。

――事前課題シートを書かれた時の、院長の思いは?

佐藤 普段から丸山と八田には、私が思っていることや期待していることを話しています。話すよりも文章で伝える方が難しいと感じましたので、書いた後、2人には直接話もしました。
八田 院長から参加前にシートを渡されて、自分が期待されている内容を改めて実感しました。

――職員に期待していることを、院長が直接伝えるというのは珍しいですよね?

佐藤 私がおせっかいなのかもしれませんね(笑)。特に、事務長の丸山は年齢が若く、当院の職場しか経験していませんので、私の責任において育てなければならないという思いが強くあります。2人に役職をつけることは、本人にとっては迷惑になっている一面もあると思うんですよ。丸山は周囲から「若い」とよく言われます。ただ、丸山が若いとは私は思っていません。世の中には彼と同い年でバリバリ仕事している人もいますし、年齢や経歴を重ねても、当院にとって良い働きをしてくれるとは限りません。私が昇進させたからには、病院の外に出しても通用する人材になってもらわないと。他の職員から「おたくの事務長は危ないよ」と言われても困りますし(笑)。

――事前課題により、明確な学習目的があったと思いますが、印象に残っている研修は?

八田 部下が約30人いるので、部下の動機づけについてです。私は3年前から課長職に就いたのですが、自分の部下に役職についている者がいないため、自分の右腕になってくれる人材を探していました。今では、若い職員も次第に入職するようになりましたが、今後は、部下を引っ張っていくリーダーを私が育成する必要があります。どうしたら良いか悩んでいるうちに、時間ばかりが過ぎていき、現場の不満が院長に届いたのでしょう。このことがキッカケで、今回の研修に参加させて頂くことになりました。部下への動機づけ等を通じて、患者様のケアの質を上げていくことが介護職の仕事なので、部下の動機付けは大事なことだと痛感しました。私一人で考えるのではなく、部署の職員全員で考えていかなければならないと。講義を聴きながら、上司とよりも、部下とのコミュニケーションが欠けていると思っていましたので。

――最初は、各部署に行き、単に見て回っているだけという印象もあったそうですが。

丸山 病棟を回ること自体は、看護部からも賛成の声がありました。「言葉遣いが悪い時もあるので、その場で注意しても良いのではないですか?」と。ただ、私が見に行った時に限って、職員の言葉遣いが良くなっているという話も聞こえてきました(笑)。

――そもそも、コミュニケーションをとる機会は多いのですか?

八田 当院の職員は若い方が多く、話す時はたくさん話をしますし、飲みに行ったりもします。新年会、新入職員歓迎会、忘年会のように、年に2〜3回は全体で飲みに行く機会があります。
丸山 飲んでる時には、無礼講に言いたいことを言うこともあります(笑)。

八田 そういう懇親の場を通じて、仕事場では部下が中々言えないことや部下の考えについて、聴くことができるいい機会になっていると思います。

――普段からコミュニケーションを密にとっているんでしょうね。

八田 以前は、経営陣と現場の職員との距離はもっと遠かったのかもしれません。現場の職員が考えていることは人伝いで入ってきますが、あがってくる不満に対してどう考えるかという点までは考えられていませんでした。こういうことを考えるようになってきたのはつい最近のことです。私は、職員の不満や考えがでてきた時は、第三者ではなく言った本人に直接聞くようにしています。それでも、直接話してくれない職員には、周囲の職員の意見を参考にし、現場を見る時の注目すべきポイントとして捉えています。声のかけ方一つについても、相手に受け入れてもらえるように意識してきました。

芽生える経営幹部としての自覚

――目標の「高卒採用」について意識していたことは?

八田 当院では主に中途採用が中心でしたが、今後は高卒の方を採用していこうと考えています。中途職員は、職場を多く経験してきていることも多く、理想像や目標意識が薄い気がします。また、先輩よりも部下が年上の場合には、先輩も教えること自体を遠慮してしまう傾向があります。こういった中途職員を多く採用していっても、「私は私だから」と言い返されて、組織として機能していかない。反対に、新卒であれば、勉強意欲や志も高いことが多く、新卒者が先輩になった時も、部下に教える自覚をもってもらうことにもつながります。毎年定期的に新卒採用できれば、組織としても良い循環ができるのではないでしょうか。

――今後は、職員教育を充実していくそうですね

八田 はい。介護職は、金銭的な理由で介護福祉士といった国家試験にチャレンジしない方もいます。勉強会の案内やテキストの貸出し、実技試験の講習など、受験のサポート体制を充実できるようにしている最中です。科目別に勉強会をしたこともありましたが、現場にかかる負担が重いと考え、今ではテキストの貸し出しや、試験の情報発信を中心に行っています。

――リーダー育成講座を受けてから、意識して変えたことは?

八田 部下一人ひとりに対して、深く接するようになりました。研修前は、試験情報を発信しても相手任せになっていましたが、職員によって案内の仕方を変えるようにしました。「せっかく部下が関心を持ったのだから、最後まで実行してほしい。」部下に試験情報を伝えた後、一人ひとりに対するフォローの仕方を考えて接していきました。逆に、上司が私に情報発信をして、仕事中に突然「あの件、どうなった?」と聞かれたら、答えられません。もちろん、当事者が自ら進めて報告してくれるのが当然かとは思いますが、最終期限になる前に、一度は部下に進捗を聞くようにしています。部下に「しなければならない」環境をつくることが私の役割だと強く実感するようになりました。研修前に院長から「経営者側としての自覚が足りない」と言われましたが、この二ヶ月間で、部下の視線に気づいたんです。今までの自分は、情報を発信できていなかったと。

――院長からの期待シートで「経営者側としての自覚」という内容がありましたね。

八田 はい。今思うと、院長から何を言われても、言われたことをとりあえず聞いているだけだったと思います。違うと思っていても、聞く一方でした。「聞いた上でどう行動するか?」を考えていないから、結局ほとんど情報を発信できていなかったんです。そういう意味で、コミュニケ―ション不足を実感しました。院長や部下からの指摘を受けた時に、そのボールを投げ返していなかった。だから、心に決めたんです。「まずは投げ返そう」と。

――「リーダーとしての6責任」の話を聞いて、そう思われたのでしょうか?

八田 そうですね。2カ月間を通して、当院・介護部門の理念を浸透すること、介護職員としてのあるべき像を伝えることに注力してきたつもりです。
そもそも、介護部門に理念がなく、模索していたところでしたので、ミーティングで理念を周知することから始めました。
研修が終わって3カ月経った今でも、普段から周囲に伝えている最中です。看護部門から介護士に求められることも、結構レベルが高いんです。病院では、介護士よりも看護師の方が役割は大きいと思われていますが、看護師からは患者様のことをよく考えてほしいということを言われる。「申し送りした時の患者Aさんは、こういう特徴があるからよく見ておいて」と。具体的にどうするべきかという理想像は言われず、その都度現場で言われるので、職員はどうしたら良いかが分からない。だからこそ、私は介護士の理想像を集約して部下に伝えてきました。
プロセスや根拠を明確に把握して、患者さんの変化を感じ取れる介護士を育てていきたいと思っています。日常生活を支えるプロとして、「こういうケアをすると、こんな反応がある」ということを介護士が自分達のケアにつなげていき、患者さんらしい生活に近づけていくべきだと思います。ただ、実際は効率性を重視して、患者様一人ひとりのことまで考え切れていないことが多くあります。患者様の特徴は、現場の職員こそしっかり把握しているはずなんですが。

――研修2ヶ月が終わった時の心境は?

八田 当時はそれほど変わったとは思いませんでしたが、今では今後何をしていくべきかが分かってきたと思います。部下と話をしていても、自分の発言に対して自信がついてきたと思います。自分が実行している、実行していないに関わらず、言葉に出して言わないと相手に伝わりません。これを意識するだけで、部下から「何考えているのか分からない」と言われることがなくなりましたよ(笑)。

――院長からみて、二ヶ月間で変化したと思う点は?

佐藤 正直あまりよくわからない(笑)。
丸山 めちゃくちゃ変わりましたよ(笑)。
佐藤 丸山は事務長になった時期と丁度重なりましたが、男性に役職を与えることで、非常に変わったという実感がありました。ただ、私達(経営者)から言わせると、もっと変わってくれるという期待感が強いので、2ヶ月間の研修っていつの話だったっけ?」と思ってしまうんです。参加した二人が変化したというのであれば、実際に変わったのだと思います。
八田 私ももちろん変わりましたよ(笑)。

仕事のやりがいを高めるマネジメント

佐藤 私達経営者はもっと成長していってほしいと貪欲に思う気持ちを強く抱いています。理想は、現場の職員と管理職の両方の視点をもって働いてもらうことですね。私は、2人が被雇用者であるとは思っていません。彼らから考えや相談を聞くことはありますが、現場の声を聞きたい訳ではありません。現場で起きたことやクレームをそのまま報告するのではなく、「こう解決しました」とか、上司としてやりきった結果を私に報告してほしいと思います。

――現場で起こったことをそのまま言うか、噛み砕いて言うかは大きく違いますよね?

佐藤 そうですね。自分の中で消化できても、そろそろいい頃ではないかなと思います。問題解決が的確にできていないのであれば、率直に報告してもらった方がいいですが、私が口を出さなければなりません。だから、最近は私が知らないことも結構多いと思いますよ。というより、私は知らないようにしている。現場で問題解決をしてもらうことがリーダーの役割だと思います。

――貴院のリーダーのあるべき像は?

佐藤 病院の理念は、難しく考えるものではないと思っています。単に、やりがいをもって働いてもらえたら良いと思っています。 一生働かなければならないからこそ、今いる職場で、自らやりがいや楽しみを見つけて働いてもらいたい。私が言う通りにするだけでなく、“やり切っている”という実感さえ本人にあれば十分です。私と意見が合わなくても、私に意見を通すために努力を惜しまずにきちんと話してくれる等、自発的に考えを発信して、お互いに満足していける職場をつくっていければ良いと思っています。単に言われた通りに働いていても、やりがいは出てこないでしょう。

――職場にやりがいがあるって大切ですよね。

佐藤 そうですね。看護部では“ヒポクラテスの誓い”のように、看護師としての立派な考え方の軸をもっています。ただ、丸山や八田のように、病院の事務職はそうはいきません。自分が働いているおかげで、病院経営がうまくいっているとか、病院の評判が良くなったなど、そういう面でやりがいを感じてくれると思います。

――直接的に患者様に接する機会がないと、やりがいを実感するのは難しくありませんか?

佐藤 確かに、やりがいを直接的に実感する機会は少ないかもしれないけれど、現実的に事務職はそうは思っていないと思いますよ。特に、事務職のリーダーは、患者様から直接的に「ありがとう」と言われることがほとんどない。あるとすれば、自分の部下が患者様から褒められる時などでしょう。自分が感謝の言葉を言われるよりも、部下が褒められている時の方が嬉しいと感じるのではないでしょうか。こういう満足感を、私達の職員にはどんどん与えていきたいと思っています。看護部では、人を助けることを理念に掲げることが多いですが、事務職は異なります。職種は関係なく、患者様が当院に入院して良かったと思ってもらえるようにしなければなりませんね。

――今後受講される方に一言お願いします。

八田 視野は間違いなく広がる研修であると思います。自分がもっていないこと、普段気づかないことを振り返ることができますので。環境は違いますが、同じ悩みをもっているリーダーが参加しているので、「自分の悩んでいたのはこれだ!」と思うことも何度もありました。受講前は、考えた挙句の果てにやり切れなかったことが多かったのですが、今では「まずやってみよう」と、相手に主導権を渡して、それを支えられるような役割を率先して担っていきたいと思っています。自分がすべきことが明確になったので、後は突き進んでいくだけですね。

(文責:編集部)

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